題名は、花村萬月氏の芥川賞受賞作品だ。
私は、この本が芥川賞を受賞した頃、地元を出て、東京都は名ばかりの、電車で1時間はかかる東京西部にある大学に進学し、自分の存在意義を考えて、悶々としていた時期だった。
偶々機会があり、ゲルマニュウムの夜を手に取ったが、私が考えている事が自意識である事、その自意識が過剰で、周囲とうまく行っていない事が、この小説を読んで、よく分かった。
当時の私には、学校では教えてくれない、ひどく重要な事を知ったような気がして、高揚感に浸っていたように思える。
そういった所も、自意識過剰が成せる業だと、中年になって、ふと理解ができる。
萬月さんは、この話を連作で書かれていて、都合9作になるようだ。
私は、休み休みではあるが、その9作を読み続け、主人公の成長過程を体感したように憶えている。
萬月さんは、率直で素直な人のように思われる。
どんな場面を描くにしても、率直で、余計な修飾はない。
自分の自意識とは何か、悩んでいるのであれば、本書はその解決の一助になると思われる。
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