ロボット–それは人類の敵か、味方か――日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて

 私は、学生時代、制御工学をメインに研究していて、大学時代と大学院時代にそれぞれ別の研究室に所属していた。

 理由は、大学と大学院で所属する大学を変え、研究内容も、制御工学の理論系から、ロボットの制御に変更したからだ。

 私が先輩と呼ぶには恐れ多いが、2つの研究室で顔を合わせた事のある方で、2名、現在、国立大学の教授になられた方がいる。

 1人は、北海道大学 大学院情報科学研究院 に所属されている、小林 孝一 教授だ。

 私が所属していた大学の研究室の飲み会でお会いした時は、まだ会社に勤められていたが、会社を退職し、制御工学の専門性の高い大学の大学院の博士課程に進学された事は、風の噂に聞いていた。

 そこからお会いする機会は無いのだが、制御工学の分野で研鑽を積まれ、教授にまでなられた事に、只々、尊敬の念を抱くだけである。

 もう1人の方は、大学院の研究室に所属していた時にお会いした、現 和歌山大学 システム工学部 中嶋 秀朗 教授だ。

 当時の親しみを込めて、以降、中嶋さん、と呼ばせて頂く。

 当時、私が修士2年目で研究が上手くいかず、悶々と研究生活を過ごしていた時、研究室に1つのニュースが広まった。

 学部、修士課程を飛び級で修了された方が、博士課程の社会人学生として、研究室に戻ってくるとの事だった。

 それが、中嶋さんだった。

 中嶋さんは、当時、まだ企業に勤められていたが、会社勤めと並行して博士号取得が目指せる、社会人学生を選択して、研究室に戻ってこられるそうだ。

 当時、所属する研究室のレベルの高さにかなり参っていた私は、この研究室を飛び級で修了された方は、どんなに頭の回転が早いのだろう、と好奇心と恐怖が半々の、複雑な心境でいた。

 中嶋さんは、当時は、基本、週末、研究室に来られ、研究に邁進されていたが、何かの機会にお話をした所、非常に話しやすく、温かい気持ちになった事を憶えている。

 もちろん、中嶋さんの話しぶりから、相当優秀である事、頭の回転が早い事は、容易に想像できたが、私のような凡才に対しても、決して偉ぶる事なく、平易な言葉を使い、対等に話してくださる姿に、素晴らしい人間性を感じた。

 私が、指導教官に泣きつく形で何とか研究の成果をまとめ、修士論文の執筆が終わりそうな冬の終わりに、偶々、中嶋さんとお話する機会があり、中島さんは、3月で会社を退職され、4月から学生として博士課程で研究される事を伺った。

 当時、奥さんと子供がいらっしゃると伺っていたが、実家が大学の近辺にあり、実家を拠点として研究活動される旨を伺った。

 私は、その決断がすごいな、と内心思っていた事を憶えている。

 ただ、中島さんの能力は普通ではなく、博士課程も期間短縮して博士号を取得してしまった事を後から聞いた時は、本当に驚いた。

 親しみやすい人間性と博士号を短縮して取得してしまう頭脳があれば、鬼に金棒だな、と勝手に思っていた事を憶えている。

 私は仕事がうまくいかず、最初の職場を退職して今の職場に移り、自分のできる最大限の仕事をしつつ、生活している。

 ただ、自分が打ち込んだ研究を懐かしく思う所があり、ふとした拍子に中嶋さんの名前を調べてみたら、ロボット工学の分野で教授になられていて、著書を執筆されている事を知った。

 これは必読の書だと思い、慌てて購入し、読み耽ったのが、題名の本である。

 中嶋さんは、ロボットの中でも主に移動体や機構と呼ばれる、ハードウェアに関する部分をメインに研究されていたと記憶しているが、中嶋さんの本を拝読して、ありあまるハードウェア愛が本から溢れ出していた。

 中嶋さんの人間性を表すように、平易な言葉を選択されているが、非常に分かりやすい文章で、専門外の方でも読みやすいように工夫されている。

 ロボット分野に興味がある学生、特にこれかの進路で悩んでいる中、高校正が一読すると、今後の進路に向けて、1つ、光明が指すかも知れない。

 一般社会人の方でも、ロボットってなんだろう、と思われている方は、一度、手にとって見る事をお勧めする。

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