世にも美しき数学者たちの日常

 題名は、主に、大学で数学を専門とされる学者の方にインタビューした内容を纏めた本となる。

 私は、工学系の大学院を修了し、電機メーカでの勤務経験のある、理系の人間だが、数学があまり得意ではない。

 専門は、制御工学で、主に理論分野の研究をしていたが、当時、指導頂いた助教授(現在の呼び方だと、准教授)の方に、

 「数学が苦手な人は、理論をやっちゃ駄目だよ。」

とご丁寧に引導を渡されている。

 ただ、大学で理論系の研究をしたお陰で、大学入試の数学は、何となく解けるレベルにはなった。

 そのため、数式に関して、アレルギーみたいな物はない。

 この本は、知人から、面白そうだから、読んでみては、と勧められて、手に取った。

 実際に読んでみて、この本は面白かった。

 様々な数学者の方がインタビューに応えられているが、私の中で、一番面白かったのは、千葉逸人先生のインタビューだ。

 千葉先生は、現在、東北大の教授として、活躍されているようだ。

 ただ、大学時代に数学の面白さに嵌り、学部時代に数学の本を執筆され、書籍化されているそうだ。

 私の大学時代、特に学部の前半は、教授の方の言う事を理解するのが精一杯で、そこから、自分で体系化し、書籍化するような事はできなかった。

 それだけで、かなりスペシャルな方なような気がする。

 千葉先生がインタビューの中で仰っていた中で、特に印象に残っているのは、

 「再構築できるまで理解する」

 ということだ。

 私なりに解釈してみると、物事に取り掛かった時、一度、その物事を自分なりの最小単位まで分解して理解し、再度、同じように組み立てられるか、実践してみる事だと思う。

 私の場合、色々上手くいっている時は、上記の再構築がうまくいっている時で、物事の理解も早いのだが、上手くいかない時に、つい、分解して理解する事を諦め、丸暗記に走ることがある。

 丸暗記に走った場合、大抵の場合、物事は、次のステップで暗礁に乗り上げる。

 急いでいる時こそ、事象を分解し、要素を理解した上で、再構築し、自分の理解度を確認する必要がある。

 千葉先生以外にも、いろいろな数学者の方が、自身の取り組みについて、本書で紹介されている。

 数学が好きな人も嫌いな人も、数学者の中では、どんな世界が広がっているのか、気になったら、本書を手に取ることをお勧めする。

 

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