題名は、芥川賞作家の中村文則氏が描いた、最新作になる。
中村文則氏の作品は、何のきっかけで読み始めたかは忘れてしまったが、以前住んでいた地域が、何故か図書館の品揃えのみ、一級品だったため、中村文則氏の作品が、出版月ごとに、陳列されている状態だった。
一度、中村文則氏の作品に嵌った時に、それまで出版されていた分を、ほぼ一気に読み漁ってしまった。
中村文則氏は私と同年代だが、人間の暗部を描くことを得意としている作家のように思われる。
中村文則氏の作品で、後味の良い、爽快な気分になる事は少なく、読後の感想は、どちらかと言うと、陰陰滅滅とした感じだ。
ただ、中村文則氏の作中で描かれる人物が、人間の暗部を晒しているからといって、全員がその暗部を暴力に訴える訳ではなく、世の中の様々な事象にその暗部を照らし合わせる。
率直に暴力に訴えないところが、巷のハードボイルド作品と、一線を画す、文学作品と言われる所以なのだろう。
この小説は、人々が列に並ぶ所から描写が始まる。
なぜ、列に並んでいるのか、その理由は説明されない。
不条理に、目的も明かされないまま、ただ列に並ぶ人々が織りなす、人間模様。
ただ、その人間模様が、妙に生々しい。
後半部は、主人公の過去などが書かれているが、これ以上書くとネタバレになるので、この辺に留めておく。
読了後、中村文則氏の新たな代表作が世に発表されたのだな、と私は感じた。
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