「破局」で芥川賞を受賞した、遠野遥氏の4作目の小説だ。
仕事の繁忙期と家族の世話で、読むのに少し時間がかかってしまった。
読むのに時間がかかったのは、こちらの都合であり、遠野氏の文体は難解ではなく、むしろ読みやすい部類に入る。
遠野氏の作品を3作、拝読しているが、現実世界と自分が意識する世界との境界に当たる部分での整合性の取れなさに、登場人物が混乱をきたす描写が、非常に上手い作家さんだと、勝手に理解している。
本作は、現実世界とゲームの世界が交互に描かれている。
しかし、現実世界とゲームの世界の境界が曖昧になり、この場面が、一体、どちらの世界の出来事が、読んでいて混乱する時がある。
本作でも自分が境界線に立っているのか、それとも、現実世界を超えて、ゲームの世界の住人になってしまったのか、その部分を明確に意識しながら読んでいくと、読了後、充足感、というか、浮遊感が得られる気がしている。
個人的は、「破局」よりも「改良」の方が、インパクトを受けた。
ただ、「改良」を読んでから、少し時間が経過していて、あらすじを思い出すのに時間がかかりそうなので、「改良」に関しては、また、別の機会に。
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