知能はどこから生まれるのか

 私は、学生時代、工学部に所属し、制御工学という分野を研究した。

 工学部へ進む事は、私自身が決めた事だ。

 しかし、元々、機械工学の分野を学びたかったのだが、入試で全て落ち、滑り止めで受けだ大学の電気工学の分野に進む事になった。

 希望していた分野では無かったが、電気工学の分野も勉強してみると面白いもので、私は、その中でも、制御工学の理論系を専門に研究されている教授の元で、研究のイロハを学ぶ事になった。

 私の師事した教授の方は、当時既に高齢であったが、その分野では高名だったらしく、私が熱心に質問すると、時間の許す限り、質問に答えてくださった。

 この教授の方から学んだ事は、私の人生を支える指針の1つとなっている。

 私は、大学院ではロボットの研究がしたくなり、機械工学系の大学院に進んだが、そこでも無理を言って、ロボットの制御について、制御工学的なアプローチで研究させもらった。

 大学院の修士論文は、決して公に自慢できる程の結論を導出できなかったが、やはり、制御工学を実機ベースで適用できるか、検討した事は、私の中では、非常に有意義であった。

 社会に出てからも、時間がある時は、制御工学に関する専門書や文献を読んで、当時の思考力の1/3でも仕事に活用できるよう、自己研鑽を図っている。

 題名は、大阪大学 教授の大須賀 公一氏が書かれた、制御工学を元に記された本である。

 制御工学は、基本、理論のため、いろいろな事象を数式メインで表現する。

 しかし、本書にはあまり数式が表示されず、あってもブロック図という、誰でも分かる図表示だけである。

 ところが、数式がない本であっても、制御工学における新たな考え方が表現されている。

 この新たな考え方に触れた時、私は、この本を購入してよかったな、と感じた。

 前述の私が師事した教授であるが、90歳を過ぎてもご顕在であり、今年やり取りした年賀状では、制御工学の分野で、また新たな方式を見つけた、と仰っていた。

 学者でも教授になるまで研鑽を重ねた方は、常に新しい事を見つける様、自身の研鑽を止めないのだなと、身の引き締まる思いがした。

 何か新しい視点が欲しい方は、一読の価値のある本であると、本書を推薦できる。

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