今回は、ラグビーの話を1つ。
2019年に日本で開催された、ラグビーワールドカップの日本代表の一員で、華麗なステップワークで相手陣内を切り裂いた快速ウィングの選手は、予てからの自身のもう1つの夢であった、医者になるという夢を果たすために、選手としての絶頂期で引退し、28歳での医学部入学を実現した。
彼の名前は、福岡堅樹と言う。
入学した大学が私立大学だったため、いろいろな憶測を呼んだが、その選手の経歴を探ると大学受験時、現役と1浪で合計2回、国立大学の医学部を受験しており、当時のセンター試験で900点以上取っていた、前期試験で医学部入試に失敗、前期試験で落ちた国立大学でラグビーを続けるという理由で、後期日程で同じ国立大学の工学系を一般受験し合格した、という話から、多分、実力で医学部に入学したのだろうと、私は推測している。
私が驚いたのは、1回り下の18歳くらいの高校生ぐらいの学生と競い、一般受験で1発勝負をし、入学したことだった。
仕事のし過ぎで人生に悩み、個人的に医学部入試について、調べた時期があった。
そうすると、日本の大学の場合、大学を卒業していると、教養課程を修了している者とみなされ、医学部であれば3年時(大学の方針によって、年次は異なる)から学び直しを始める、学士編入制度があることが判明した。
医学部の場合、国立、私立を問わず、若干名ではあるが、毎年募集があるので、彼はその制度を利用して医学部に入学するのではないか、と考えていた。
学士編入試験制度を使って、文系の大学を卒業後、医学部の3年生に編入し、医師免許を取った上で、医師として活躍している方もいるそうだ。
学士編入試験のメリットは、試験科目が英語と生命科学(大学によって、科目が増える可能性あり)となり、国立大学の場合、1次と2次合わせ、5教科7科目の入学試験で高得点を取得しなければならない一般入試と比較して、科目数が絞れること、大体の大学が3年時編入となり、6年制の医学部の場合、早ければ4年で医師免許が取得できることが挙げられる。
始め、彼が一般入試で医学部再受験を目指していると聞き、学士編入試験のメリットを知っていた私は、一体、何が彼をそうさせたのか、非常に困惑したのを覚えている。
結局、彼は私立大学の医学部を受験し、合格したのだが、私立大学の医学部の場合、国立大学と比較した時に、学費の桁が違ってくる。
日本で医師を目指す場合、多くの学生が国立大学を目指す大きな理由の1つではあるが、彼が合格した大学は、私立大学の中では、学費が安い大学として、紹介されていた。
学費が安いから難易度が簡単、ということはなく、むしろ、難易度は医学部の中でも上位の方だったように記憶している。
彼は、医学部を再受験するにあたり、私立大学の場合は、受験前に予め、学費等も調査の上、自分がラグビーのプロ選手として稼いだお金で、6年間、学費を払うことができるかを勘案した上で、志望校を決定したらしい。彼の目標を達成するための逆算思考の実行に、頭が下がるばかりである。
医師になる方法として、日本国外に目を向けた時、日本から、東欧のハンガリーの大学の医学部に留学し、医師の勉強をする、という方法があるらしい。
海外のため、講義は全て英語で、英語でのコミュニケーション能力は必須になるが、海外では、日本のように、大学受験で、医学部が最難関ではない国もあるそうだ。
もちろん、人の体を診る職業のため、真摯に取り組む資質は必要だが、入学の際、入学試験で高得点を取ることが課せられない国が、ハンガリーらしい。
ハンガリーの大学の医学部を卒業後、日本で医師として活躍する場合は、日本の医師国家試験に合格する必要があるが、逆に言うと、医師国家試験さえ突破すれば、日本で医師として活躍できる。
留学のため、日本の国立大学に通うよりは、年間の費用がかかるが、私立大学の医学部に通うよりは、費用を安く抑えることができるそうだ。
留学受け入れのための年齢制限があるのかなど、不透明な点も多いため、医師という仕事に興味のある方は、一度、詳細を調べてみることをお勧めする。
彼は、医学生になった今でも、当時所属したプロチームのアンバサダーとして、ラグビーの普及に力を入れていると、風の噂で聞いた。
また、自身の半生を記した著書を出版されており、私も手に取る機会があったのだが、ラグビー日本代表として、ラグビー界のトップとして活躍し、受験界の難易度の最高峰である医学部受験を突破した、究極の文武両道を極めた人の言うことは、なんとまあ心に響くことかと、読了後、感心させられた。
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