題名は、京極夏彦氏の百鬼夜行シリーズの第2作にあたる作品だ。
京極夏彦氏の事を、以降、尊敬の念を込めて、京極さんと呼ぶ。
京極さんの作品との出会いは、はっきりとは憶えていないが、当時、高校生だった私は、京極さんの出世シリーズにあたる、百鬼夜行シリーズにはまり、受験生にも関わらず読書に熱心だったため、見事に受験に落ちた。
親の計らいで、県外の大手予備校に通うために、寮に住まわせてもらったが、そこでも京極さんの小説を数冊、寮に持ち込んでいた。
私は、ある意味、京極さんの小説に取り憑かれていたらしい。
百鬼夜行シリーズの記念すべき第1作は、姑獲鳥の夏だ。
ただ、後で京極さんのインタビューを読んで合点がいったが、姑獲鳥の夏は、従来、もっと長い小説であったのを、小説の新人賞の応募枚数に合わせるため、泣く泣く話をコンパクトにまとめて応募したそうだ。
私の読解力では、姑獲鳥の夏を読んだ時、どうも話が細切れになって、一体感が無い気がしていたが、強ち、私の感覚は間違っていなかったようだ。
2作目からは、新人賞の応募枚数の制限もなく、京極さんがのびのびと小説を書かれている。
そういう理由で、私個人としては、初めて京極さんの作品を読むならば、魍魎の匣が良いのでは、と思い、推薦させてもらう。
魍魎の匣、というタイトルが示す通り、この小説のキーワードは、匣である。
箱ではなく、函でもなく、匣、という点が、ポイントのような気がする。
京極さんの小説では、見立て、が重要になってくるが、複数の事象が発生する中で、「匣」をキーワードにすると、絡み合っていた事象が、個々の事象として浮き上がってくる。
読者の方には、この辺の解きほぐしを堪能してもらいたい。
特に、この蒸し暑い季節、寝苦しさを紛らわすには、丁度いい題材かと思う。
ただ、問題点としては、京極さんの小説は、分量が多い。
どのくらい多いかと言うと、発売当時の講談社ノベルズの場合、本を横にしなくとも、普通に立つレベルである。
子どもの弁当箱ぐらいの大きさと質量がある。
私は、若い時は、京極さんの本を鈍器として扱い、殺人事件が起こるのでは、と勝手に想像していた事がある。
読まれる方は、その分量に圧倒されずに、少しずつ、読まれる事をお勧めする。
百鬼夜行シリーズ のファンとしては、2023.09月に百鬼夜行シリーズ の最新刊にあたる、鵺の碑 が発売されたのは、非常に嬉しかった。
何故なら、しばらく前に発行された、当時の最新刊の終わりが、戦隊ヒーロー物の最終回みたいな終わり方で、
「ああ、京極さんは、もう、続編をかかないのだな。」
と覚悟していたからだ。
発売から少し遅れて、鵺の碑 を入手、取り掛かっているのだが、仕事と家庭を持つと、まとまった読書時間が取れず、まだ読み終えていない自分がいる。
私は、今回、盆休みは長距離移動の予定なので、そこで、鵺の碑を読み進めようと画策している。
コメント