魔王

 題名は、伊坂幸太郎氏の初期の小説だ。

 以降、伊坂幸太郎氏を、伊坂さん、と呼ぶ。

 小説は2つの連作で構成されていて、最初の話の主人公は会社勤めの男性、次の話は、その弟が主人公になって、話が進められていく。

 最初の話では、何でも疑ってかかる会社員の男性が、不思議な力を手に入れ、その活用法を考える事で話が進んでいく。

 ただ、物語が進んでいく背景が、すごく重い。

 その重さと対比するように、主人公と弟、弟の彼女が織りなす日常風景が、ささやかな幸せの風景として描かれている。

 この小説の登場人物は、別の小説でも登場し、重要な役割を果たすのだが、伊坂さんの小説では、1つの小説の主人公が、他の小説でも入り乱れて登場するのが、面白さの1つになっている。

 普通の人生を歩んでいた人間が、ふとした拍子に、その人生の方向が変わってしまう、そんな疑似体験を希望される方は、本書をお勧めする。

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